イタリアホラーの巨匠、ダリオ・アルジェント。伝説の初期3作を2024年11月に一挙上映。

極彩色の悪夢的なビジュアルと先鋭的な音楽を融合し、それまで低く見なされがちだったホラー映画を官能的なアートへと変貌させたイタリアを代表する映画監督ダリオ・アルジェント。
彼が1970年前半に発表した初期監督3作は、いずれもタイトルに動物の名前が含まれていることから『動物3部作』(アニマル・トリロジー)と呼ばれている。

1作目『歓びの毒牙(ルビ:きば)』(1969)は、主人公が目撃した「事件」を回想する構造を用い、観客が真相に迫るスリルを追体験するという、視覚的効果とサスペンス要素を融合させた画期的監督デビュー作。
2作目『わたしは目撃者』(1970)は盲目の元新聞記者を主役にした本格的サスペンスで、視覚の喪失というアルジェントの永遠のテーマを見事に映像化。
続く3作目の『4匹の蝿』(1971)は、現実の世界と悪夢の融合という彼の個性的な作風を確立した先駆的な作品だ。

従来のホラー映画やスリラー映画にはない視覚と音の融合、心理的サスペンスの追求、そして科学技術を駆使した新しい表現方法を導入したこれらの作品は、アルジェントの創造性と革新性の象徴である。
3作を通じて名匠エンニオ・モリコーネが実験的な映画音楽を提供しているのも要注目だ。

さらに「ジャッロ」と呼ばれるイタリアのスリラー映画ジャンルの確立に寄与し、1975年にそのジャンルの名声を確立した『サスペリアPART2』へと繋がる基盤となった。
昨年公開された最新作『ダークグラス』(22)でも、そのイマジネーションは衰えることを知らない。

ダリオ・アルジェントは今日に至るまでホラー映画のマエストロとして君臨、全世界の映画ファンから賞賛され、多くのクリエイターに影響を与え続けている。

LINE UP

動物3部作は若き日のダリオ・アルジェントが70年代前半に立て続けに放った鋭い3本の矢。
『サスペリアPART2』も『サスペリア』も、これらの映画がなければ決して生まれなかった。
公開から50年以上を経て、ますます輝き続けるアルジェントの初期の傑作が新しい字幕で劇場公開される。
なんて贅沢で幸せなことだろう。巨匠の胎動をぜひ映画館で感じていただきたい。

アルジェント監督の映画に心底魅せられた人たちは、幼い頃に「孤独」というものを知った人たちだと思う。そんな人はみな思う。

「この映画は私の心の中を映している。そこには常に根源的な恐怖があった」

長くアルジェント監督の映画を観てきた私もまた、そういうひとりである。

彼の映画でしか満たされない視覚の感動がある。現実では矛盾しているかもしれないけれど、悪夢の世界では当然の映像の流れがある。

そしてそれらはなぜか私を癒してくれるのだ。

ダリオ!あんたはどうしていつもこうなんだ!と叫ぶ自分ですら既に愛おしい。

人を獣の論理で描き尽くす鬼才。あなたの頭蓋になぜ?どうして?どうやって?の蜘蛛の巣が張り巡らされたら彼の勝ちだ!

なんとアルジェントの初期作品である「動物3部作」が一挙劇場公開される!

 『歓びの毒牙』(1969)『わたしは目撃者』(1970)『4匹の蝿』(1971)」を順に観ていくと、アルジェントがジャッロ映画の監督として頭角を現していくだけではなく、これまでにない“ビジュアリスト”して熟成していく様を目撃することになる。

そして、何よりも、これらはあの傑作『サスペリア PART2』へと繋がる“習作”でもあることだ。

この3部作を担当するモリコーネの音楽も、ゴブリン採用へと繋がる“エチュード”でもあるのだ。

『歓びの毒牙』の洒脱、『わたしは目撃者』の愛嬌、そして『4匹の蝿』の鋭利さ……。

みずみずしく鮮やかな「動物3部作」に常に感動させられるのは、

とてつもない才能の誕生を目撃できる歓びに満ちているからだ。

アルジェントが“イタリアのヒッチコック”と呼ばれた頃の初期3部作だが、

あらためて見直すと、どこをどう切ってもアルジェント。 

本人が語るように、彼の描く殺人は「純粋に美的」なものであり、

常に「死者の祝祭」として演出されているのだ。

アルジェント初期3部作を一気見して、現代の作品と比べても全く遜色のない、いやむしろ近年の表現のまだ先をいく、スタイリッシュで構図の極まった映像の数々に衝撃を受けた。 

『歓びの毒牙』の画廊を始め、鮮烈な画でブッ飛び気味の話をグイグイ力づくで引っ張っていく唯一無二の面白さ!!これをスクリーンで体験できるなんて……! 

リバイバルブームがこれからも続いて、こういった作品が次々と再び日の目を見ることを願う。

伝説は一日にして成らず。 

暗い鏡に映る心の深淵に、恐怖の真髄を探る若きアルジェントのめくるめく魂の旅の出発点。

 歴史的傑作『サスペリアPART2』へ向かって、青い果実が妖しく色づいてゆく歓びの「あなたは目撃者」となる。

往年のファンはもちろんですが、アルジェントのことを知らなかったような若者など、ご新規さんのことも考えつつ、美しく蘇った映像に合わせ、字幕を刷新しました。 

どうぞ、ホラーだと身構えず。初期のミステリー要素強めのゾクゾク感は、アルジェント入門に最適ですよ。

暗闇に潜む何モノかがあなたを捉え、 

それを嘲笑うように、〈3つの獣〉が全てを捉えている。

 サスペンス?ミステリー?バイオレンス?スリラー?エロス?ホラー? 

その全てが、昨今聴かなくなったジャッロ映画だ! 

あなたは3つの血生臭い事件とジャッロ映画の目撃者となる!!

まだ"ジャッロ"という言葉どころか、監督の"アルジェント"すら

ノーマークだった頃にひっそりと公開された作品たち。

それらには、皮手袋、不気味なギミック、心理描写、痛みの伝わる表現、

趣向を凝らしたPOV殺人、独特の色使いやアーティスティックな

カメラワークによる美学などなど、その後のアルジェント作品の

特徴となる表現手法の原点がかいま見られる。 

この"鈍く輝く宝石の原石"のようなサスペンスを、

あなたは目撃者となってスクリーンで体験できるのである。


鮮やかな色彩と独特で不穏な音楽、華麗な殺人描写はどこまでも美しく、まるで醒めない悪夢のよう。

デビュー作からあまりにもダリオ・アルジェント!

その耽美さに怖がりながらも思わずうっとりしてしまった。

宙吊りにされる不条理、響き渡る虚しい声、呆気なく迎える自滅......。

独特な幕引きを仕掛けてくるダリオ・アルジェントの映画からしか得られない後味が、常にある。

『サスペリア』でしかアルジェントの名を知らないあなたにも、

この「動物3部作」をどうか思う存分味わってほしい。

今や代名詞となったダリオ・アルジェントの黒い革手袋。それを彼が初めて着装した監督デビュー作をスクリーンで観られる日がくるなんて。洗練された緊迫感とエンニオ・モリコーネの劇伴に身を浸し映画を丸ごと飲み込むような、強烈な劇場体験になるだろう。

DIRECTOR

 “鮮血の魔術師”とも呼ばれるイタリアン・ホラー界の巨匠。

映画プロデューサーの父親とカメラマンの母親を持ち、幼少から映画製作に興味を抱く。高校時代からホラーやサスペンスに傾倒し、映画雑誌に映画評を投稿、卒業後はローマの新聞「パエーゼ・セーラ」の映画批評を担当する。

セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』(1968)の原案をベルナルド・ベルトルッチと共同執筆して以降、マカロニ・ウエスタンや戦争映画の脚本を手がけ、1969年の『歓びの毒牙』で監督デビュー。『4匹の蝿』(1971)や『サスペリア PART2』(1975)などの傑作を次々に発表し、1977年の『サスペリア』が全世界的に大ヒットし、ホラー映画の鬼才としての地位を確立した。

その後『インフェルノ』(1980)でハリウッドにも進出、『シャドー』(1982)『フェノミナ』(1984)や『オペラ座 血の喝采』(1988)などの話題作を発表。ジョージ・A・ロメロ監督作『ゾンビ』(1978)の製作にも関与し、「デモンズ」シリーズなどのプロデューサーとしても知られる。

近年も監督最新作となる『ダークグラス』(2022)や初主演作『VOLTEXヴォルテックス』(2021)が劇場公開され、自伝『恐怖』の邦訳が出版されるなど、84歳となる現在もその動向は全世界の映画ファンからの注目を集め続けている。